「ボール投げれない子」が増えている?遊びの変化と、投げる力を育てるヒント
【起】ボールを投げるのが苦手な子が増えているのはなぜ?
「ボールを投げるのが苦手」「思った方向に飛ばせない」と感じる子どもは、決して珍しくありません。投げる動きは、腕を振るだけでできるように見えますが、実際には、目標を見る、足を踏み出す、体をひねる、腕を振る、手を離すといった動きを連動させる必要があります。経験が少ないうちは、力の入れ方や体の使い方がわからず、ボールが足元に落ちたり、狙いとは違う方向へ飛んだりすることがあります。
背景の一つとして考えられるのが、子どもたちの遊び方や過ごし方の変化です。以前は、友だちとボールを投げ合ったり、広い場所で追いかけっこをしたりするなかで、投げる動きを自然に繰り返す機会がありました。ところが、遊びの選択肢が多様になり、屋外で体を動かす時間や、自由にボールを使って遊ぶ機会が限られると、投げる動きを経験する回数も少なくなりがちです。これは、子どもが怠けているということではなく、日々の環境や遊びの変化によって、動きを身につけるきっかけが減っているということです。
また、ボールに触れる機会があっても、いきなり遠くへ投げる、相手に正確に届けるといった課題に取り組むと、うまくできない経験が先に立つことがあります。失敗を恥ずかしく感じたり、周囲と比べて自信をなくしたりすると、投げること自体を避けてしまう場合もあります。投げる動きは、繰り返すなかで少しずつ身につくものです。初めから強さや正確さを求めすぎず、楽しく試せる雰囲気をつくることが大切です。
さらに、投げる力には腕の筋力だけでなく、姿勢を保つ力やバランス、体の左右を協調させる力も関わっています。体の成長や運動経験には個人差があるため、同じ年齢でも投げ方や飛距離はさまざまです。ボールをうまく投げられないからといって、運動能力全体に問題があると決めつける必要はありません。
大切なのは、苦手さを責めるのではなく、どの動きで困っているのかを見て、できるところから経験を重ねることです。近い距離で柔らかいボールを投げ合う、的に向かって軽く投げるなど、成功しやすい遊びから始めれば、投げることへの抵抗感も和らぎます。遊びのなかで投げる動きを楽しむことが、子ども自身の「もう一度やってみたい」という気持ちにつながっていきます。
【承】遊びや運動の機会が減り、投げる動きに触れる機会も少なくなっている
ボールを投げる動きは、特別な練習をしなくても、遊びのなかで自然と身につくことがあります。友だちとキャッチボールをしたり、広場でボールを投げ合ったりする経験を重ねるうちに、投げる方向や強さ、腕を振るタイミングなどを試せるからです。しかし近年は、子どもたちの遊び方や過ごし方が変化し、投げる動きに触れる機会が少なくなっていると考えられます。
背景のひとつに、外で体を動かして遊ぶ時間の減少があります。習い事や学習に使う時間が増えたり、家のなかで楽しめる遊びが身近になったりしたことで、外遊びの時間を確保しにくい家庭もあります。また、遊ぶ場所や時間に制約があり、ボールを使った遊びを思いきり楽しむのが難しい場合もあります。ボール遊びができる環境があっても、友だちと集まって遊ぶ機会が少なければ、投げる動作を繰り返す場面は限られてしまいます。
遊びの内容の変化も関係しています。以前は、ボールを使った遊びが日常のなかにあり、特別な運動として意識しなくても、投げたり受けたりする経験を積むことができました。一方、現在は画面を使う遊びや、道具をあまり必要としない遊びなど、選択肢が多様になっています。こうした遊びが悪いわけではありませんが、遊び方の幅が広がるなかで、投げる動きを経験する機会が相対的に減ることはあり得ます。
投げる動きは、腕だけを使えばよいものではありません。ボールを持つ手と反対側の足を前に出す、体をひねる、腕を振る、最後に指先でボールを送り出すなど、いくつもの動作が組み合わさっています。こうした動きを身につけるには、説明を聞くだけでなく、実際に投げてみて、うまくいった感覚や思ったように飛ばなかった経験を重ねることが大切です。試行錯誤する機会が少ないと、投げることに慣れないまま成長する子どももいます。
さらに、運動の機会があっても、走る、跳ぶ、蹴るなど、ほかの動作が中心であれば、投げる経験が十分とは限りません。体育の授業やスポーツ活動だけに任せるのではなく、日常の遊びのなかで投げる動きを経験できるかどうかも関わってきます。年齢や運動経験によって身につき方には個人差があるため、投げるのが苦手だからといって、すぐに能力を決めつける必要はありません。
大切なのは、投げる経験を特別な訓練に限らず、楽しめる活動として少しずつ取り入れることです。近い距離からやわらかいボールを投げ合う、目標に向かって転がしたり軽く投げたりするなど、成功しやすい遊びから始められます。うまく投げられたかどうかだけで評価せず、「投げてみよう」とする気持ちや、体を動かす楽しさを大切にしましょう。遊びの選択肢が変わった今だからこそ、子どもが安心してボールに触れ、投げる動きを試せる機会を意識してつくることが、投げる力を育てる第一歩になります。
【転】投げる力は、年齢や運動神経だけで決まるものではない
「ボールを投げるのが苦手」と聞くと、年齢が低いから、運動神経がよくないから、と考えてしまうことがあります。しかし、投げる力は生まれつきの能力や体格だけで決まるものではありません。体の動かし方を知り、実際に投げる経験を重ねることで、少しずつ身につけていける力です。
投げる動作では、腕だけでボールを飛ばすのではなく、足を踏み出し、腰や肩を回し、腕を振るというように、全身を連動させます。こうした動きは、一度説明を聞いただけで自然にできるとは限りません。ボールを持って試したり、投げた結果を見たりするなかで、自分に合った力の入れ方や体の使い方を覚えていきます。うまく投げられない時期があっても、それだけで「運動が苦手」と決めつける必要はありません。
また、年齢によって身につけやすい動きに違いがあるのは確かですが、成長の速さや経験には個人差があります。同じ年齢でも、ボール遊びに親しんできた子と、そうでない子では、投げる動作に慣れているかどうかが異なります。経験が少ない子は、投げ方を知らないというより、試す機会が限られていたために、動きをつかむ途中なのかもしれません。
大切なのは、遠くへ投げられたかどうかだけを評価しないことです。まずはボールを持つ、狙った方向へ放る、相手に届く距離で投げるなど、取り組みやすい段階から始めます。柔らかく大きめのボールを使えば、握ったり受け止めたりする不安も減らせます。近い距離で大人と向かい合い、ゆっくり投げ合うだけでも、腕を振る感覚や相手を見る習慣を育てられます。
声をかけるときは、「もっと強く投げて」と結果を求めるより、「ボールをよく見ていたね」「足を前に出せたね」と、動きの一部に目を向けるとよいでしょう。できた点に気づけると、子どもは安心して次の一投に挑戦しやすくなります。失敗したときも、すぐに正しい形を押しつけず、どうすれば投げやすいかを一緒に試すことが大切です。
投げる力を育てる土台は、特別な才能ではなく、安心して体を動かし、何度も試せる経験です。遊びのなかで少しずつ成功や発見を重ねれば、投げることへの苦手意識が和らぎ、動きにも変化が表れてきます。今の記録や見た目だけで可能性を判断せず、その子のペースに合わせて機会をつくることが、投げる力を伸ばす一歩になります。
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